sekibang 1.0

2012年1月3日まで利用していたはてなダイアリーの過去記事です。

堤幸彦監督作品『20世紀少年<第2章>最後の希望』

 近所のシネコンに朝イチで赴き鑑賞。周囲はこども、またはファミリーが多く「青年誌で連載してたマンガなのにこの客層は……」というところでびっくり。あと、こんなにポップコーンくさい劇場で映画を観るのも初めてだった……。映画の内容は「この映画を見せられたこどもたちはその後きっと映画を好きになったりしないんだろうな、たとえなったとしても、記憶から抹消されているんだろうな」というのが容易に想像がつくほど中身がなく、むちゃくちゃで、観たあとに虚無感しか残らなかった。失笑に苛まれ続ける悪夢のような2時間半である。これはもう個人史的にも地面に150メートルぐらいめり込んでいるような逆・金字塔。


 冒頭の話の飛び方はほとんど前衛的なレベルであり、原作未読者は置いてきぼり確実。映画のスピードは、物語的な流れを観客が咀嚼するまえに、次のエピソードへと飛ぶので登場人物への共感もなにも不可能なレベルの速度に達する。興味深いのは、なんの共感も抱けない登場人物たちが執拗なほど泣いたり、驚いたりと忙しいことである。彼らは観客にほとんど説明しないままに涙を流しながらスクリーンに現れる。ほとんど直截的に「泣く」という現象だけがそこには映る。あたかも「役者が泣いているシーン=感動的なシーン」という記号的な関係を提示するかのようにして。まずこのような演出に対して大いにシラけるのが普通の人だと思うけれども、もしこれが受け入れられるのだとしたら、私はその人を外国人だと思うだろう。